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浮 島 彫 刻 ス タ ジ オ
彫 刻 ワ ー ク シ ョ ッ プ 構 想


はじめに


彫刻とは、石、木、鉄といった自然の素材に新たな命を与える作業である。 現代社会における芸術の分野の中でも特に彫刻は、建築、造園などの公共的空間と密接な関連性が強い。自由な個性の表現としての芸術であることはもとより、社会の将来的な文化的発展の重要な役割を担っていくであろうことは疑いもない。 彫刻スタジオとは、創造的な彫刻芸術を生み出すことにその目的がある。その「彫刻」という作業にとって、制作のための環境は、単なる作業場というだけではなく、そこでは、作ることと考えることが同様に大切なのである。


1)基本構想
岩手山を見据えて広がる西根町・岩手町周辺は、豊かな自然に恵まれ、風景もダイナミックである。こういった環境が、芸術家の感性に強く働きかけるものがあることは、歴史上この地域に著名な作家が多く輩出したことからも明らかであろう。 八幡平、岩手山麓の自然環境は理想的な条件を備えているといえよう。更に、北上山 脈一帯には、御影石や木材など、天然の彫刻素材に恵まれている。国道4号線や東北縦貫高速道、東北本線や、将来的には東北新幹線などの交通の便も 非常にいい。こういった芸術活動のためには、スタジオ設立の好条件を備えているといってよい。

2)具体的構成
まず、生活居住空間を含む、彫刻工房を幾棟かに分けて建設。全体的には、屋外+屋内作業空間、重機及び運搬車両の作業空間、さらに材料、資材作品置き場など合わせて、約60a程度必要であろう。さまざまな彫刻素材の制作加工が可能なように、道具・設備を備える。電動、圧縮空気設備機器はもちろんのこと、重量物の移動運搬のために、フォークリフトやホイスト等も備えていることが望ましい。

1敷地総面積−約150a程度以上。 敷地は基本的に、平坦であること。
2既存の家屋(居住可能)があること
3電気(100V・200V)・水道・通信等設備
4大型車両の通行に支障のないこと。
5豊かな自然環境

3)将来的展開の方向性について
数人の作家の共同運営による彫刻工房を設立の基本的骨格とする。彫刻スタジオは、原則的に個人の自由な制作活動の展開をその中心的目標とするが、また、このスタジオのもうひとつの大きな可能性は、広範な環境造形計画を現代的社会的視点で取り組んでいく研究施設としての役割である。その内容は、アートを中心とした国際的な文化交流の場として、シンポジウムやフォーラム、セミナーなどのイベント、多角的な環境造形プロジェクトを組織的に運営していく。日本と海外諸国との文化芸術活動交流の場として、作家たちを中心とした、躍動的な活動拠点となることだろう。

3-2)浮島スクール構想(2002年1月追記)
豊かな環境造形実現のためには、彫刻的視点とともに建築的視点も重要であるとの認識から、アートと建築の協働、共鳴する空間の社会的実現のために、短期セミナーやワークショップを通じて、積極的に建築家との交流を図る。そのため、ギャラリー、セミナーハウス、ゲストハウス、ライブラリーなどの施設も必要ではないだろうか。
NPO的な組織形態の上に、臨機応変に上記のプログラムを実現できるフットワークの軽い組織を目指す。

4)参考実例
4-1)リンダブルン国際彫刻シンポジウム(オーストリア)
1967年から1987年に至る約20年間に毎年約7〜10名前後の作家を世界各地から招待して、リンダブルンの石切り場にての石彫制作活動を中心として、隣接する広大な丘を屋外彫刻公園として整備している。首都ウィーンから南に約30キロのその公園は、自然あふれる美しい芸術公園として、訪れる人々により週末や休日はにぎやかである。1988年以降は、ウィーン応用芸術大学の特設学部(環境造形学部)として運営される。

4-2)スコティッシュ・スカルプチャー・ワークショップ(英国)
ラムズデンというスコットランドの小さな町にある、このスカルプチャー・ワークショップは、昔のお菓子工場の敷地建物を、ギャラリー、宿泊施設を含む彫刻家のためのアトリエとして再整備・再利用したものである(1980年)。作家は必要経費を支払い、それぞれの都合に合わせて、一定期間独自の制作活動を行う。ハイランド地方の豊かな自然の真ん中にあるこの施設は、毎年世界各地から人が集まり、また、16世紀の古城跡での彫刻展をはじめ、さまざまなイベントを行っている。ワークショップは社団法人として、その運営のために、文化庁、地方自治体からの援助を受けている。

1991年9月14日

片 桐 宏 典
ケ イ ト ・ ト ム ソ ン