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ケイト・トムソン個展 「光の彫刻」盛岡クリスタル画廊

2001年

光は私の仕事にいつも重要な意味を持ってきた。とりわけ屋外に置かれる大型の彫刻の場合には、自然光が作品の形態にどのような表情を与えるかということが、構想を練る段階から完成の瞬間まで、極めて重大な関心事になる。一日のうちの時間によって、季節によって、あるいは国によって、様々に異なり変化する光の色が、一つの形をいかに違ったものに見せるかということに気づいた時、私は光に色彩を加え、変化させる試みに着手することにした。  今回の作品展では、光を表現するために、手で彫って磨いた大理石の彫刻と「カラー・キネティックス」(発光ダイオードを使用した光の色を変化させる装置)という最新のテクノロジーを組み合わせて使っている。これが、微妙な色合いの変化をスペクトルの全領域にわたって操作し、さらに、ある特定の単色から別の単色へと変化させることを可能にしてくれた。大理石の光沢のある質感が作品のフォルムの内側や周りで光を放ち、周囲の光の色合いと方向が「カラー・キネティックス」の、鮮やかだが微妙な変化の奥行きを増してくれるのだ。

光というものに私が強く惹きつけられるのは、北日本の田園の中に住んでいることに大きく影響されていることは間違いない。ここでは季節ごとの太陽、月、星の巡りが、自然環境の中でこの上なくドラマティックで美しい役割を担っているのだ。  会場の作品中で、7本の光の柱のうち4本(「一番長い夜」「春分」「一番長い昼」「秋分」)は四季を表現しているが、インスタレーションとして会場全体を見たときには、文明の夜明けから人間を魅了してきた週や月、そして年ごとのサイクルを示唆している(「ムーン・ダンス」のような作品)。同時に、どの文化も、深い洞察や英知を有し、与えてくれるのだという視点も強調している。(これは「ブック・オブ・ライト」に最もよく表されている)また、これらの自然界の現象に魅惑される(あるいは、その前で愚かさをさらけ出す)人間の姿は「イカルス」に表現されている。

今回の展覧会では、光は様々な考えやインスピレーション、時の流れを表現し、電気の光は現代のエネルギーを象徴している。また石には永久不変、永続性や伝統という意味合いを持たせ、照明の当て方を変えることによって、認識や知覚の多様性を表現している。また変化する光の動きは、互いに異なる文化を理解し、評価し合うことによって、人類の文明はさらに歩みを続けていくことを予感している。

展覧会全体が一つのインタレーションとしてデザインされてはいるが、一つ一つの作品はイタリア製の大理石で入念に作られ、それぞれが独立した精緻な彫刻に仕上げられている。昼間の光の中では、これらの彫刻は自然光を捕え、その形を通して光を反映し、フォルムの内側と外側の動きに生命を吹き込む。彫刻はあたかも一日の光の変化に対するセンサーのように働き、光の変化に反応する。電気の照明の元では、作品の内側の空間が関心を惹きつける焦点となり、離れた光源を近くから観察したいという思いに誘うだろう。
(ケイト・トムソン、翻訳:山本勢津子)

会場 盛岡クリスタル画廊
会期 2001年12月8日~29日