浮島彫刻スタジオ UKISHIMA SCULPTURE STUDIO

楽しい彫刻

何をつくるか
いつも何かを探していて、今度は何をつくろうかな、といつも考えている。
朝、⽬が覚めたときに思いつくこともあるが、作品を⽯でつくる場合、作業に時間がかかるので、その間にふと次の作品のアイディアが⽣まれることが多い。

どうやってつくるか
アイディアは簡単だが、それを形にするのは難しい。
素材を深く理解していなければいけない。特殊な道具が必要になる。制作するスペースも必要だ。
絵を描くのと違って、制作⼯程を誤ると致命的になることがある。
形は⾃由だが、⽯は硬い。

スタジオとは何か
彫刻家にとってスタジオ(僕らはアトリエとは呼ばない)とは、アイディアを形にするための、知識と知恵の結晶でなければならない。
⽕星に向かう宇宙船と同じように。

スタジオでの⾃由な制作
グラインダーに取り付けたダイヤモンドカッターで、⾃由⾃在に切ったり削ったりする。
納得のいくまで、何度でも線を引き直しては眺めて、消しては書き直す線。
気分によって変わっていく形、どんどんどんどん作業は続く。
⼤きなものはもちろん外で。
夜中でも雪の中でも。

パブリック・プロジェクトの場合

⾃由な制作とは別に、依頼された仕事をする場合、まず、アイディア・スケッチを提案して、必要であれば模型などをつくってで検討する。
プランがが決まれば、構造計算をして、地震でも倒れないように頑丈な基礎を設計してつくってもらう。材料となる⽯を発注してから、⽯切場で切り出してもらうのに、早くて3ヶ⽉、⼤きいものの場合6ヶ⽉かかる場合がある。
制作期間は、私たちの場合、⼤きくても⼩さくても半年から1年ほど。それ以上はかけない。作業の程度によって、アシスタントの⼈数を増やすが、あまり多いと、⼯程管理が⼤変になる。基本的に私⼀⼈でのんびりやれればそれに越したことはないのだが、締め切りというものがあるのだ。

⼤きな⽯彫作品をつくるのはスリリングだ。巨⼤な⽯を割って削って(彫って)いくのだが、もちろん⽯というものは、⼀度彫ったら元に戻らない。失敗は許されない。しかし失敗を恐れて臆病になっていては仕事が進まない。いつまでたっても作品はできあがらない。できあがる形を想像して、それに近い線を狙って彫っていく。この瞬間はミケランジェロでも私でも同じだ。
思い切った決断をするにはやはり経験と知識がものをいう。もちろん正確な作業も必要だ。とにかく全⾝全霊をかけて向かい合わないと⽯には弾き⾶ばされさてしまう気がする。だから彫刻は⾯⽩い。

スタジオで作品が完成したら、現場に持って⾏って設置作業を⾏う。トラックや⼤きな30tのトレーラーに積んで、これもまた⼤きな100tクレーンなどを使って作品を吊り上げ、設置する。⼀番緊張する⼯程だが、巨⼤な⽯が宙を舞うとき、⾝体中にアドレナリンが溢れるのを感じる瞬間でもある。
同じものでもスタジオで⾒ていた時と、現場に設置された時では印象が全く違う。最初に紙の上で計画した通り、思い描いていたイメージ通りできあがるかどうか、⾃分の想像⼒の真価が問われる。
これだから彫刻はやめられない。